暮らしと環境・エネルギーの情報紙「燦」(サン)

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大樹小樹

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2010年12月

 例年秋にIEA(国際エネルギー機関)の世界エネルギー展望に関する記者会見が行われる。今年もパリから、田中伸男事務局長がこのために来日した▼今年はこの分野でも、中国が大きなテーマになった。同国のエネルギー消費量は、2000年時点では米国の半分だったが、09年に米国を抜いて世界最大となった▼こうしたことを踏まえて、今回の展望では、中国の消費量はさらに増大して行くだろうと見ている。種類としては、天然ガスである。世界全体の天然ガス需要量は、08年をベースに35年まで年率1.4%で増加するが、中国は年率6%と突出すると▼いずれにせよ、安いエネルギー価格の時代は終わったと田中局長は言う。したがって、各国がそれを前提にした施策を行うことが重要だと。日本は石油需要を減らして原子力を増やすというシナリオも呈示した▼一方で、再生可能エネルギーの重要性も指摘した。これの利用を増やす余地が最も大きいのは、発電部門であると。主に風力と水力だ▼さて、来年発表される展望には、それぞれの国の具体的な新施策が盛り込まれることになるのだろうか。

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2010年11月

 このところ、リニア中央新幹線の動きが活発化している。ルートの選定、本格試運転の時期、初代営業車両の概要発表などである▼東京―名古屋3候補のうち、直線ルートにしぼられた。費用対効果がいちばん良いのだという▼本格試運転は13年度中に始める。営業運転にも使える車両をつくり、山梨の実験線18kmを42kmに延長して行う▼初代営業車両は、先頭の「鼻」が15mもある。現在の東海道新幹線のN700系のそれより4割も長い。定員は先頭車両が24人、中間車両が68人。ボディーの色は、白を増やすという▼それにしても、新しいシステムの開発には時間がかかる。1997年に無人で時速550kmの記録。筆者らは98年12月に試乗させてもらった。その際、飛行機よりも揺れないなと感じたのを記憶している▼有人走行で時速581kmを記録したのが03年12月。開業予定は、当初の25年を27年に延期した。開業の暁には、東京―名古屋間が40分。新大阪まで延びると、品川から67分で行ける。今の新幹線や飛行機はどうなる?▼一方で最近、中国で世界最高速鉄道開通のニュース。日本の営業力が問われる。

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2010年10月

 多くの抗生物質も効かない多剤耐性菌対策が、緊急の課題である。が、じつは過去にも何度か、大きな問題になったことがある▼多剤耐性緑膿菌では、約10年前に、国内で死者が確認されている。今は緑膿菌だけでなく、多剤耐性アシネトバクターなど、種類も増えている▼今回の発端となった、東京・板橋の帝京大病院の院内感染は、まさにこのアシネトバクターである。一方、インドから帰国して、栃木の独協医大病院に入院していた患者から、NDM1という遺伝子を持つ耐性菌が検出された▼これが報道されたのはこの9月だが、見つかったのは、昨年5月のこと。この患者が持っていたのは大腸菌である。NDM1がらみでは、肺炎桿菌もみつかっている▼NDM1を持つ菌が広がれば、市中感染の拡大など深刻な事態になりかねない。薬の効きにくい膀胱炎や肺炎が広がる恐れもある▼それでは、私たちはどうすればいいのか。院内感染対策チーム向けのマニュアルの監修など、この問題に詳しい東北大学大学院の賀来満夫教授は明快だ。「環境が大事です。そして手を良く洗い、清潔なタオルで拭くのです」。

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2010年9月

 はやぶさ人気が止まらない。小惑星イトカワに着陸し地球に帰還したカプセルなどの一般公開で来場者が5日間で10万人を超えた▼太陽系の謎に迫るという科学的関心はもちろんだが、7年間、60億kmの旅を支えた当事者たちの壮絶なドラマに感動した▼事業仕分けの対象になったことも関心を呼んだ。後継機の開発費、今年度17億円が3千万円に減額された。結局2号機は2014年度打ち上げ、予算164億円を見込む▼日本は科学技術に人とカネをつけよという世論も盛り上がった。それが結局は経済成長にもつながるという主張も見られた▼図書も、何冊か出ている。06年11月に初版が出た「はやぶさ」(吉田武、幻冬舎)は我が国の初期の宇宙開発体制にも触れ、糸川英夫博士と全国紙記者の確執までも扱ったのはユニーク。ごく最近に出た「小惑星探査機 はやぶさの大冒険」(山根一眞、マガジンハウス)は、克明な記録がすごい▼はやぶさは、イオンエンジンの長期間運用など最先端の技術を駆使している。2号機を含めて、世界2位ではない地位をずっと保ち続けてくれることを期待したい。

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2010年8月

 宮崎の人たちにとっては、長い長い3カ月だった。口蹄疫の最初の感染例の確認が4月20日、全制限の解除が7月27日であった▼県内の5市6町に広がり、牛と豚合わせて28万9千頭が殺処分された。あとで分かったことだが、じつは3月中旬に侵入していたとされる。初動の遅れが大きな被害につながったのか▼直接の被害を受けたのは畜産業で、損失額は少なくも800億円とされる。金額もだが、自分の子のように育てていた牛や豚が殺されて、石灰と土をかぶせられるのを見る飼い主の悲嘆。一方で、この騒ぎをよそに中南米に外遊していた農水相も記憶に新しい▼影響は畜産業に限らない。観光や物流など幅広い業種が、大きな打撃を受けた。雇用にも響いた。夏の高校野球宮崎代表を決める試合も、制限を受けて話題になった▼今後は、殺処分した家畜に対する手当金などが課題になる。すでに7月末現在で、予備費から計411億円の支出が決定。業績が悪化した観光業やサービス業への貸付などの措置もとられる▼防疫対策では、ウイルスが持ち込まれないように入国管理を厳しくするなども検討される。

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2010年7月

 新型インフルが最近また話題に上っている。近々流行が始まるという話ではなく、大量に残っているワクチンの処分に関してである▼1億3千万人分が残っているという。日本の人口よりも多い。なぜそんなに残ったのか。原因はいくつかある。最初は1人に2回ずつ打つ計画だったが、1回で効果があった。受けた人が比較的少なかったことも予測違いを生んだ▼今さら言うのもなんだが少し甘かった。使用量の推移を見つつ、発注を少し控えるとか。もっとも、途中で足りなくなれば、別の角度から批判される▼契約したがまだ納入されていない分については、解約の交渉をした。ただし違約金が発生する。スイスのある会社とは契約量の3割を解約。違約金だけで92億円ほどになる▼ワクチンの使用期限は最長1年で、順に廃棄される。前回流行時の購入総額は違約金を含め約853億円だ▼ところで気になるのは、次の流行への備えである。次はA香港型、B型、新型の3種混合にする。発生から10カ月内に2億2千万回分を確保するとしている。すでにスイスの会社から4千万回分の優先枠をとるなどしている。

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2010年6月

 前政権の政策のなかでそこそこの評価をされたものがいくつかある。事業仕分けがその一つ。新政権も良いものは発展させていってほしい▼いろいろな事業について行われたが、宝くじが記憶に残っている。結論は天下りなどの問題が解決するまで販売を認可しないように求めるという厳しいものだ▼宝くじの売り上げは08年度で1兆400億円。このうち当せん金として支払われるのは45%である。かなり多いというか、そんなに少ないというか▼残りはどこへ行くのか。仕分けでは官僚OBに2千万円前後の報酬を支払っていることが指摘された。金が流れる先の団体が借りている事務所ビルの賃料が年間1億8千万円であることも▼多種多様な事業の運営など細かい具体的な部分については、素人は通常、知る手段をほとんど持たない。その点、事業仕分けが行われてそれをテレビ画面などを通じて観ることで、片鱗でも知ることができるようになったのは大変な進歩である▼次の段階は仕分け人が指摘した問題点がその後、具体的にどのようにクリアーされたかだ。これをフォローするのはメディアの重大な責任である。

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2010年5月

 上海万博を40年前の大阪万博とダブらせて見る人も多い。日本もあの頃は活気に満ちあふれていたと▼大阪万博とほとんど時を同じくして、日本はドイツを抜いて西側第2位の経済大国になった。現在の中国は、GDPが近々、日本を上回り、世界第2位になる。上海、とくに会場の黄浦江両岸は近代的な都会である▼今回の万博のテーマは、「より良い都市、より良い生活」である。経済発展だけでなく、今最大の問題である環境への取り組みも随所に伺える。日中の協力で繁殖に成功したトキの物語が感動を呼ぶなどしている▼中国にはいろいろな人がいることも、今回再確認した。日本産業館の邦貨で約75万円する「世界一トイレ」を別荘用に5、6個まとめ買いする富裕層もいれば、外国人がたくさん来るから歩道橋に布団を干すなという当局のお達しもあったとか▼PR曲の盗作騒ぎでは、万博事務局と作曲家の対応が異なったが、それはともかく、この事件を中国の市民たちが真っ先に非難したのが、唯一の救いである。中国の市民も、おとなになった▼気になるのは、発展を続ける中国に対する各国の姿勢だ。たとえばアメリカは、しっかりと食いついている。一方で日本に対しては、つれない。日本にはあまり期待できないというわけか。これも、結局は日本側に非があるということなのだろうか。

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2010年4月

 日本人女性が久し振りに宇宙を飛んで、有人宇宙飛行への関心が再び高まった。これまで向井千秋さんだけだったし、今回の山崎直子さんは初飛行まで11年も待ち、7歳の子がいるなど話題に事欠かない▼野口さんがすでに宇宙に居て、日本人二人が同時に滞在するのも、これまでなかった。日本人の宇宙滞在総日数は近いうちにフランスやドイツなどを抜いて、世界第3位になるという話もある▼今回も新しい実験をいくつかやった。一般にも開放するミニ無重力実験装置「キューブラボ」の搭載などである。ところで、山崎さんにとっては初飛行だが、これとは対照的なのが、山崎さんら7人が地上と国際宇宙ステーション(ISS)の間を往復したアメリカのスペースシャトルである。今年退役することが決まっている▼一方、国際宇宙ステーションの方は、運用を2020年まで5年間延長されることになっている。日本の実験棟「きぼう」も、それまでは使うわけだが、費用などを考えると、もう少しユニークな活用ができないかという意見も、すでに出ている▼その一つが、森林火災や、大地震の被災状況を有人で監視する機能を持たせようという構想だ。さらに、アジアの各国や地域に開放しての共同実験・研究も視野に入っている。宇宙分野での協力が、外交関係の強化にもつながれば、という考えだ。

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2010年3月

 2月27日に発生したM8.8のチリ大地震が日本でもいくつかの波紋を広げた。津波警報の精度、住民らの対応などである▼地震発生を受けて気象庁は津波警報、注意報のほか東北3県には高いところでは3メートル程度以上の津波が予想されるという「大津波警報」を出した。230人の犠牲者を出した93年の北海道南西沖地震以来、17年ぶりである。ところが実際には最大1.2メートルだった▼同庁は3月1日、予測が過大だったと詫びた。これに対し前原国土交通相は2日、「謝罪すべき問題だったのか」と述べた。過小であるより過大であった方が、より周知徹底できるという。まあ結果的には良かったかもしれないが▼避難指示・勧告を受けていながら避難所に移った人の数が少なかったことも指摘されている。総務省消防庁によれば、大津波警報が出された岩手、宮城、青森の3県では約34万人に避難指示・勧告が出されたが避難所に移ったのは約2万人にとどまった▼津波がどういう動きをするものかといった基本的なことが、本当に理解されているのかという問題もある。いったんは避難所に集まった人たちが、第1波が観測された時点で帰り始めた。市の職員らが2波の方が高くなる危険性を説明したのだが▼ここで、従来なら古老の出番である。津波の一般常識を、アニメでもいいから普及させてはどうか。

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2010年2月

 花粉症の人には、辛い季節である。昨年夏の気温が低めだったことなどから、スギ、ヒノキなどの花粉の飛散量は、ほとんどの地域で平年並みか、やや少なめという。それにしても、花粉症を発症するレベルには達している▼花粉症の治療法は、少しずつではあるが進歩している。よく使われる薬は、抗ヒスタミン薬である。くしゃみや鼻水などを起こす原因物質であるヒスタミンの放出を抑える作用がある。ただし、眠気を誘うことがあるので、車を運転する人は要注意である。鼻に噴霧するステロイド薬も使われる▼根治療法として、減感作療法がある。花粉症の原因物質を薄めたものを長期間、皮下注射することで、慣らしていく。最近の研究では、舌下減感作療法がある。注射ではなく、花粉エキスを食パンに含ませて舌下に置き、粘膜から吸収させる▼各地の花粉飛散量を的確に伝える情報システムも整備されている。千葉市の民間気象情報会社ウェザーニューズ社が開発したポールンロボという観測ロボットがある。直径約15センチの球で、口の部分から花粉を取り込み、量に応じて発光する色が変わる仕組みである。これを全国700カ所に設置し、データはネットで公開する▼花粉が多いから、今日は外出はやめるというわけにもいかないかもしれないが、服装などに気を配るといった使い方もできるだろう。

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2010年1月

 昨年の暮れも押し詰まった26日、中国から1本のニュースが届いた。広東省広州市と湖北省武漢市を結ぶ高速鉄道が開通し、世界最速の時速350キロを記録した▼従来は11時間ほどかかっていたこの区間を約3時間に短縮する。この線路はいずれ北京まで延長され、広州−北京を9時間で結ぶ▼これによって、とかく格差があるとされてきた沿海部と内陸との交流が格段に便利になる。列車はドイツのシーメンス社の技術協力を受けたもので、日本の東北新幹線をベースにしたものも投入される▼鉄道輸送はいうまでもなく車に比べて環境への影響が少ない。中国の場合、それももちろんだが景気対策の意味合いが大きい。実際に各地で高速鉄道の建設を急いでいる。今回の路線は京広高速鉄道の一部で延長1,069キロだが、これを約4年半で完成させた▼環境といえばコペンハーゲンで開かれていたCOP15が12月19日に終わった。政治合意を了承しただけで、ポスト京都の枠組づくりは先送りした。先進国と発展途上国の折り合いがつかなかった。その一方で先進国は、環境改善のため途上国援助に巨額の支出をすることが決まった▼中国の高速鉄道網が整備され、その結果、同国の経済が発展するのは歓迎である。何年か後のCOPの会議で中国が先進国なみのCO2削減目標を提示してくれることを期待したい。

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