暮らしと環境・エネルギーの情報紙「燦」(サン)

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大樹小樹

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2011年9月

 「人工多能性幹細胞」よりは、「iPS細胞」という方が、通りがよいかもしれない。この分野の研究で、日本の動きが急加速した。外国の特許取得、実験動物での生殖細胞作成に成功などだ▼特許は、最先端を行く京大。iPS細胞は山中伸弥教授らが世界で初めて開発した。この基本技術に関する特許が米国でも成立したのである。国外では欧州、ロシア、シンガポールなどに続いて7番目だ▼実験動物での生殖細胞作成に成功したのは、同じ京大の斎藤通紀教授ら。マウスのiPS細胞から精子への分化に成功。その精子を使って、体外受精、出産させた。さらに孫まで生まれたというから驚きだ▼iPS細胞自体、一般にはまだ、なじみが薄いし、つい最近まで、SFの世界の話だと思っていた人も多いが、研究のスピードは想像を絶する▼もちろん、臨床応用できるまでにはまだかなりの時間がかかるし、倫理面での議論も経なければならない。今のところは、医薬品開発などを目的とした基礎研究に限られる▼しかし、この分野では各国がしのぎを削っており、実用化は意外に近いかもしれない。

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2011年8月

 地上波のテレビが、3県を除いてデジタルに完全移行した。しばらく時間がたってみると、いくつかの問題が先送りされた感じもしてくる▼アナログを視聴できたときから、「無料回収」などと言って受像機を山林に捨てる業者がいたというが、移行以後、どのような防止対策がとられているのか▼VHFのアナログをUHFのデジタルに変更するのは、電波を効率利用できるなどのメリットがあり、新サービスも展開できるということだが、空いた電波の今後の利用計画をご開示願いたい▼「地デジ実用化実験を近く始める」という発表が97年8月にあった際、「デジタルにする時は有害番組の放送停止技術も開発する」という話も出た。すでに実用化されていつから実施されるのか▼もうひとつ、「地デジ難民」への対応である。とくに視覚障害者はFMの携帯ラジオでFMを楽しむと同時にテレビの音声も聴いていたが、これが入らなくなった。せめて音声だけでもFMで流してもらえまいか▼この際、テレビを視るのをやめた人も、かなりいるという。本をじっくり読んで、日本の近未来を考えてみようか。

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2011年7月

 瓦礫の山、引き続いて起きる余震、エネルギー危機、政治の混迷‐。暗いニュースが延々と続くなかで、点ったひとつの明かりが、世界遺産への登録であった▼小笠原諸島が自然遺産、平泉が文化遺産である。なかでも平泉の登録は東北地方では初めてのことで、地震や津波などで未だに不便な暮らしを強いられている東北の人たちの励みになったことは間違いない▼小笠原は東京から南に1千km離れている。大陸と陸続きになったことがないため、固有種が多い。植物の36%、昆虫の27%が固有種である▼問題は、そこまで行く交通手段だ。今のところ、片道25時間半の船しかないが、今回、登録されたことで、訪れる人が増えることは間違いない。ただ、自然破壊につながることだけは、絶対にやめてほしい▼一方の平泉は、平安時代後期、奥州藤原氏が約100年にわたって栄華を極めた。中尊寺の金色堂、毛越寺の浄土庭園などが有名だ。ここを訪れた芭蕉が義経などを思って詠んだ「夏草や 兵(つわもの)どもが 夢の跡」は良く知られている。今回の東日本大震災でも、大きな被害は免れた。

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2011年6月

 日本の企業の間で、レアメタル即ち稀少金属の開発熱が急速に高まっている。レアメタルは薄型テレビや携帯電話などの製造に欠かせない材料だ▼ところが、レアメタルの世界最大の産出国である中国が、今年から輸出制限を強めており、早急な対策が必要になっているのだ。需給の逼迫で、価格も急騰中だ。そもそも日本は、レアメタルで中国に依存しすぎた▼レアメタルの一種に、レアアース(希土類)というのがある。磁石の原料になるネオジムやジスプロシウムなどである。例えば携帯電話を分解してみると、パラジウム、チタン、インジウム、ニッケル、タンタル、クロムなどが出てくる。パソコンにせよ、脳などの断層写真をとるMRIにせよ、レアメタルなしにはつくれない▼加えて、新興国が成長して車や電子機器をつくるようになっており、レアメタル争奪戦は今後ますます激しくなる。日本の緊急対応策は、中国以外の国の企業からの輸入を増やすことと、権益を持つ海外の鉱山での増産である。前者はアメリカやオーストラリアなどであり、後者の鉱山はポルトガルなどに存在する。

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2011年5月

 節電と聞いて何を連想するか、世代で微妙に異なるようだ。中高年は、戦争中や戦後間もないころを思い出したり▼節電が徹底している。地下鉄の通路、店舗内、病院の待合室など、ずいぶん暗くなった。夜間、ほとんどの家は門灯を消している。星がよく見える▼脚光を浴びているのが発光ダイオード(LED)照明だ。東芝、パナソニックなど多くのメーカーが量産体制に入った。消費電力が蛍光灯に比べても半分だ▼日本の電力消費の約20%が照明である。これが全部、LEDに置き替われば電力消費は少なくとも1割減と、計算上では、なる。2030年までにすべてをという目標も出ている▼店舗の照明をLEDに変える計画をしているコンビニもある。初期費用を抑えるためリース方式を提案しているメーカーもある▼一方で企業は、自家発電の導入などに追われている。25%の節電という重い負担が課せられている。パソコンの消費電力を3割減らす自動プログラムも登場した。クールビズ期間を延長する企業も増えた▼以前長続きしなかったサマータイムを復活してみるのも一つの手かも。

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2011年4月

 宮崎からトラックを24時間運転して救援物資を届けた人がいる。口蹄疫でお世話になったお礼だという▼今回の東日本大震災自体は未曽有の悲惨なものだが、温かい話もたくさんある。日本人がしばらく忘れかけていたものが甦った▼世界各国からも救援の手が伸べられた。原発関連ではフランスのサルコジ大統領や原子力大手アレバの専門家らが来日した。国際原子力機関(IAEA)や米国などからも▼原子力のヘビーユーザーで、輸出にも力を入れるフランスにとって、今回の福島第一の事故は痛手である。にもかかわらず、親身に協力してくれる▼アレバは米国のスリーマイル島や旧ソ連のチェルノブイリ事故の処理にも取り組んだ。国内では再処理工場の高濃度放射性廃液を扱っている。今回の事故処理を通じて、同社の実力が国際社会で広く再認識されることを期待したい▼震災発生から3週間ほどたった頃、ワシントンのポトマック河畔の桜が満開になった。そこで開かれた追悼会で「日本人はこういう危機でも必ず立ち直る」と言ってくれた米国人がいたという。ありがたい話である。

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2011年3月

 ニュージーランド地震では、前途ある多くの日本人が犠性になった。誠に痛ましい限りである▼今回の地震では、7〜8km四方という大規模な液状化現象が起きたことが確認されている。40cm沈んだ住宅さえもある▼ニュージーランドでは、巨大地震がひんぱんに起きている。今回のはマグニチュード(M)6.3で、昨年9月にはM7のが起きた▼もっと大きなのは76年1月ので、同じ14日に2回7.8と8.2のが起きた。さらに86年10月には、やはり8.2のが▼今回の地震で倒壊した留学生のいたビルは、背後の部分が残っているのだが、これは、ねじれ振動と呼ばれる現象が起きた可能性があると。建物の1カ所が強い構造を持っていると、そこを中心に回転するような現象だ▼ところで、プレート境界に位置するニュージーランドには、良く知られている活断層がある。が、今回のクライストチャーチ付近は、活断層は知られていなかった▼長く休んでいても、動く時には大きく動く活断層もあることが、今回わかった。これを今後、防災に具体的にどのように生かして行くのか。

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2011年2月

 作家の松井今朝子さんが、最近の新聞のエッセイで「今年はもう電子書籍の端末機を買うつもりだ」と書いている。この文に触発されて、1台買った▼今まで、どのシステムにしようか散々迷っていた割には、あっさりと決めた。5陣営の優劣を、ほとんど感じなくなったからなのだろうか▼使ってみると、なかなか良い。この端末の画面は、電子ペーパーというそうで、薄いグレイの地に黒い文字。文字の大きさは変えられる。かなり長時間読んでも疲れない▼さて、これをどこで読むか。ファミレスもいいか。そういえば、ファミレスでは電子書籍ではないが、PCで作業している人もかなり見かける。それとも、ちょっとした旅行に持って行くか▼これまでは、文庫本を何冊かカバンに入れて行った。この本体は400g弱だから、文庫本3冊か4冊分ほどだ。ただし、収納できる本の冊数は桁違いだ▼「紙の手触りが欲しい」などと思うのは、古い人間だからか。このシステムは新しいタイプではあるが、やはり「活字本」であることは間違いない。そして、長い本の歴史のなかで、画期的なできごとであることも。

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2011年1月

 今年は多難な年になるのを覚悟した方が良さそうである。昨年は問題先送りがあまりに多かった。対外的には、腰抜けと言われても反論できない事態もあった。尖閣列島である▼これが日本人同士の事件なら、即逮捕、刑事裁判である。なぜ、処分保留で釈放したのか。後が面倒だと思ったのか▼一方、国内では、大勢の海保職員が処分を受けた。守秘義務違反だという。何が違反かといえば、先方がぶつかって来たのを撮影したビデオを外部に見せたのは公務員法に触れると▼頭の良いお役人の論理は、庶民にはわかりづらい。事件が起きたこととビデオの存在を知った大多数の国民は、早く見たいと思った▼早期に公開していれば、その後は秘密ではない。公開すべきと感じた保安官は、処分を覚悟の上でやった。私たちは、むしろ拍手を送るべきか▼問題は、これからである。尖閣のような事件は、間違いなく今後も繰り返し起きる。中国は確信を持って行動して来る。日本は、国としてどう対応するのか、それを早く決めてほしい。相手は中国だけではない。アメリカのことも考えなければならない。

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